一般社団法人 経済社会システム総合研究所(IESS)

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提言

(提言2021)
「Well-Being Capitalism」(快適資本主義)の構築に向けて
~「相互信頼下の持続的価値創造システム」へ

経済社会システム総合研究所「KAITEKI研究会」(小林喜光会長)は、日本が今日まで続く長期停滞を脱し、また、気候変動や少子高齢化さらにはパンデミックといった歴史を画する構造変化、パラダイムシフトを乗り越えて、経済的価値はもとより、健康や持続可能な環境、社会などを含む「多様な価値の持続的創造=KAITEKI」を実現することを目標として、種々の調査を行い、エビデンスを基礎として企業や政府が取組むべき改革のあり方などについて研究を行ってきた。

 今回、KAITEKI研究会は、日本、米国、ドイツで同時に行った「社会課題に関する3か国意識調査」の結果を公表するのに合わせ、近年の資本主義の構造変化(特に、地球環境問題や所得格差などの社会課題への意識の高まりを背景とした人々の行動変化や、生産活動における人的資本、知的財産、データなどの無形資産の重要性の高まりなど)に対応するため、「Well-Being Capitalism」(快適資本主義)の構築を提言することとした。

「Well-Being Capitalism」は、経済的価値だけでなく、人と人、人と自然・社会との関係などの社会的価値を含む人にとって重要な全ての価値創造(将来世代のwell-beingの向上を含め)に貢献することを目標とし、資本主義の構造変化に対応して、資本主義システムを大きく改革しつつ、その仕組みを活用していこうとするものである。

 以下では、「Well-Being Capitalism」の実現に向け、企業に対しては、企業の社会貢献を市場参加者が的確に評価できるよう経営の透明性を高め、コミュニケーションを強化すること、無形資産の「共有者」というべき存在である従業員、消費者、社会などのステークホルダーに対してリターンを的確に分配すること、無形資産がその力を発揮するために必要不可欠な「相互信頼関係」(社会関係資本)を強化していくことなどを、政府に対しては、経済成長だけでなくwell-being全体をカバーする国の目標(Beyond GDP)を再定義し、その実現に向け取組みを強化すること、社会全体の信頼関係を回復すること、企業等民間の取組みを支える環境を整備すること、そして、国民全体が共同で保有すべき基礎的な無形資産として「ベーシック・キャピタル」(基礎的な人的資本、広く社会が必要とする知的財産やデータ等)を明確に定義するとともに、ベーシック・キャピタルへの投資を増強することなどを提言する。

(注)well-being は、一般的に「満足な状態」、「健康で安心な状態」、「究極的に良い状態」など を指す。本提言では、この言葉を「人と人、人と自然や社会との関係など人を取りまく諸環境が快適で、幸福を生みだせる状態」という意味で用いる。

(PDFファイル)
提言2021 Well-Being Capitalism」(快適資本主義)の構築に向けて~「相互信頼下の持続的価値創造システム」へ